NHKビジネスクリエイト

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90ちゃん号がゆく
〜 放送車両事業部 〜

90ちゃん号がゆく
〜 放送車両事業部 〜

こんにちは、放送車両事業部 副部長の鈴木修一です。
「旅ラジ!」という番組、ご存じですか?ラジオ第1とNHK-FMで月曜から金曜、午後0時30分〜0時55分まで生放送されています。番組サブタイトルは『ラジオイベントカー90ちゃん号があなたのまちを訪ねます』。文字通り、全国の街をラジオイベントカーが旅する番組です。ラジオイベントカー「90ちゃん号」は、NHKの放送開始90年を記念してネーミングされた、ラジオ中継ができるステージカーです。車体片側が大きく展開して野外ステージとなるよう、大改造された車両です。その旅の距離は年間3万kmにも及びます。放送車両事業部ではこのうち、主に関東甲信越の旅を担当しています。

そこで、「旅ラジ!」の番組制作に放送車両事業部のドライバーがどのように関わっているのか、2017年7月5日(水)の埼玉県越谷市の放送を例にご紹介します。
担当ドライバーは、すでに数々の現場をこなし、ベテランの域に達した西野貢ドライバーです。台風3号の通過直後で天候が心配されましたが、昼前には晴天となり、暑さの中で本番を迎えることになりました。出演者は地域のお祭りのリーダーや、住宅メーカーとともに空き家対策を進める方、市役所の方など。観客はご近所の皆さんです。 ここからは、西野ドライバーにバトンタッチします!

ドライバーの西野 貢

7月5日の「旅ラジ!」を担当した、ドライバーの西野貢です。
放送局のドライバーは運転するだけではありません。
ラジオ放送の舞台裏をご案内します。

午前 9:00 現場到着 、設営

午前 9:00 現場到着 、設営

前日下見での打合せどおり、車両の留め位置に駐車します。90ちゃん号で現地に向かうスタッフはプロデューサー、ディレクター、ドライバーの3名で、現場に先乗りして当日の設営を行います。どの場所にどんな機材が搭載されているか熟知していないと、ムダな動きが多くなってしまいます。今回は、地域の人たちが集まるイベントスペースの隣。ステージの方向、観覧席の位置、スピーカーの配置やケーブル敷設など、周りの状況や安全にも目を配りながら作業を進めます。特に車両の水平出しは重要で、ステージの展開に影響するので注意します。上部の障害物にも気を払い、事前の下見や打合せの段階から情報を整理しておきます。

日本に1台しかなく代替のきかない車両なので、とにかく丁寧に扱います。作業は必ず声を掛け合いながら進めます。さらに、臨時加入電話回線のテスト。90ちゃん号は放送を出すのに、臨電(有線)、携帯電話(衛星電話・Foma)を使います。
各回線の状態や車両への引込みルートは下見のときに確認します。
また、「旅ラジ!」は公開生放送なので、放送はもちろん「90ちゃん号」も見てもらうことになります。車はできるかぎりピカピカの状態にしておきます。少人数で時間の制約があるため、効率よく仕事をしなければなりません。そのうえで、観客のの安全を確保しながら、楽しく見て、聴いてもらうことに留意しています。

午前 10:00 街行く人に声かけ

午前 10:00 街行く人に声かけ午前 10:00 街行く人に声かけ

ステージ設営後、10時頃には現地局(今回はさいたま局)から数名のスタッフが合流し、放送準備に加わります。一方、私たちドライバーが何をするかというと、通りを歩く方たちに声をかけ、うちわやチラシを配って番組のご案内をします。実はこれ、とても大事な仕事です。 以前、ある街の放送で大物ゲストが来られていたのに、放送15分前で観客はゼロ!なんてことがありました。とにかく街行く人に声をかけ続けたら、本番開始時には100人ほどの方が...。ほっとしたのを覚えています。ちなみに今回は、50人ぐらいの方にお声がけしました。

午前 11:00 リハーサル 〜 午後 0:30 公開生放送 !

午前 11:00 リハーサル 〜 午後 0:30 公開生放送 !

リハーサルが始まる頃になると、ご近所さんや放送実施を聞きつけた方が集まり始めます。番組スタッフや出演者がリハーサルを行う裏で、お客さんへの声かけは続きます。この日の放送は住宅メーカーの協力を得ながら地域の空き家対策を進める方のお話や、日本三大阿波踊りのひとつに数えられる「南越谷阿波踊り」、生のイチゴを使ったご当地カキ氷の美味しさなどが紹介されました。この日の観客は20人ほど。和気あいあいとした雰囲気の公開生放送となりました。

午後 1:15 撤収、次の現場へ出発 !

午後 1:15 撤収、次の現場へ出発 !

「旅ラジ!」は連日放送があるので、撤収の良否はそのまま次の現場設営の効率に繋がります。早く、キレイに、確実に撤収を終えて、次の現場の埼玉県滑川町へ旅を続けます。90ちゃん号に限らず、中継車などを全国に走らせることはとても楽しい仕事です。一方で、安全のために自身の運転技量を最大限発揮することを心がけ、仕事にあたっています。

次の現場の埼玉県滑川町へ旅を続けます。
西野ドライバー、紹介ありがとうございました。

西野ドライバー、紹介ありがとうございました。
さて、ご覧いただいたように「旅ラジ!」は私たちドライバー職の貢献度がとても高い仕事です。各ドライバーの前職はみなそれぞれ、大型トラックや路線バス出身など多様ですが、放送に直接関わるこうした業務は、楽しく達成感があり、大切な仕事として認識されています。大規模なテレビ中継などと比べて、スタッフや出演者、そして視聴者との近さが魅力なのかも知れません。
90ちゃん号の業務オーダーを受け付けるデスクは、行程に無理がないかなど演出側にプランを十分確認しています。
また、ステージ付イベントカーという特殊性から、NHKにも代替となる車両はありません。改造部分が多いうえ、渋谷の放送センターにいる機会が少ない車両だけに、メンテナンスにも気を配らなくてはなりません。
整備担当者は、必要があれば90ちゃん号の改造メーカーと連携し、旅の途中でドック入りを手配することもあります。こうして当事業部では、笑顔の絶えない「旅ラジ!」放送にできるだけ貢献できるよう、自らも楽しみながら一体となって取り組んでいます。